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最近の短歌
寂しさの心の所以は訊かれたくなくてただ見る青澄む空を
諸行無常とふ常套句さへ空しもよ老いて朽ちゆくあはれ術なし
追憶はただに美し幻のごとく毅然と白き水芭蕉
牡丹のぼってり戸口に並びいる冬日つやつや炎えてゐるなり
感動の失せてならじと思ひつつ懇ろに書く老いの書き初め
冷え込むと今夜の予報聞きしより会ふ人ごとに教えておりぬ
小春空一回りして観覧車老婆一人をぼとり吐き出す
幼子の耳の形はわれに似しと言えば嬬殿激しく否定す
残照は冬空高く残りゐて光る球体が過ぎてゆきぬ
新春の音は澄みたる大空を渡り来るなり杉の枝打ち
駅伝の少女らの肌赤らみて一区の道路に塊りて来る
素裸の枝黒々と青空を突き刺す厳しき冬に真向かふ
ほがらなる雲雀の声を大空の雲の絶え間の青きに仰ぐ
人間の秘め持つ業ともさだめとも蜘蛛の巣の蝶しきりにもがく
義歯合はぬ辛さ訴ふる嬬なれど外しし口元愛らしくも見ゆ
松枝の針葉の上にかかる雪ほの白うして月に輝く
限りある生命の日々を愛ほしみ遠のく雲の影追ひて居つ
心して繰り返すまじき歴史あり今の平和に潜む危ふさ
それぞれの裸木の小さき芽を濡らし庭は静かに芽起こしの雨い
幾度も帽子飛ばされ追いかけて五月の風と一緒に歩く
悲しみも怒りも未だ風化せず兵のままなり聞く蝉時雨
散る花に同期の朋ら征く機影かさなり戦後はわれ果つるまで
はにかみて少女が包む蛍らの明りにハンカチの花柄浮かぶ
いまもなほありありとして終戦の夏の残像が脳裏の底に
竹藪のこぼれ陽受けて咲く著莪のうす紫の花ぞ親しき
五月雨に濡れて動かぬ青蛙無言の境地に我を誘(いざな)ふ
はにかみて少女が包む蛍らの明りにハンカチの花柄浮かぶ
月、嶺を離れて山は低う見え渓の瀬に乗り河鹿しば鳴く
自動車のヘッドライト照らされて戸惑ひし狸身動きもせず
老けこみて心も疲れやすくなり一期一会の翳の冥(くら)さよ
風わたり竹群ゆるくさわさわと騒立つ音に目覚むる夜明け
松が枝の針葉の上にかかる雪ほの白うして月に輝く
心して繰り返すまじき歴史あり今の平和に潜む危ふさ
それぞれの裸木の小さき芽を濡らし庭は静かに春となる雨
放流され稚鮎惑はず上り行く武芸の川瀬に紛れ光りて
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